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活断層 厳格な再審査を東京新聞,2012年9月23日(投稿)

 今後の原発のあり方を議論する前に、活断層を総点検することが必須である。綿密に調査、審査されてきたはずなのに、活断層の見落としが発覚している。原子力安全委員会はこの問題を早急に検証し、厳格な再審査により安全確認を実施してほしい。

 問題が起きた第一の原因は、福島原発事故に関する国会事故調査委員会の報告にもあるとおり、電力会社など事業者と審査体制との間の不適切な関係にある。二〇〇六年に審査指針等が改訂された際にも、古い原発が違反状態にならないよう、事業者のみならず審査委員がルールの厳格化を妨げた。審査体制の中立性をいかに担保するかは、信頼回復に向けた最初の関門である。

 第二は、審査ルールよりも審査委員の個人的見解が優先されたことにある。活断層の定義すら曖昧だった。審査指針には「後期更新世以降(最近約12万年間)に活動した可能性の否定できないもの」と明記されているが、揺れによる被害防止に主眼を置くため、「地震を起こす長い断層のみが活断層だ」と主張する人もいる。短い断層でも敷地内にあればズレによる深刻な被害が起きる。活断層を狭く定義すると危険性を見落としかねない。「可能性の否定できないもの」という点も重要だ。調査ですべてわかるとは限らない。「グレーはクロ」と慎重に判断すべきとされてきたのに、この原則は守られていない。

 第三は、審査規定の不備だ。敷地内の破砕帯が活断層かどうかを早急に見極めなくてはならないが、決め手となる調査手法や判断基準が明確に示されていない。活断層の上に建設することを禁ずる規定すらない。国際原子力機関の安全基準では、断層を広義にとらえ、直上への建設を明確に禁じている。「わが国は地震国のため、国際基準では厳しすぎる」との意見もあるが、逆だ。

 安全を確認するためには、①活断層の定義を明確にし、②調査や判断の基準をルール化し、③真上に建てないなどの禁止条項を明確にする以外に方法はない。原子力規制委は従来の体制を一新し、学界等、中立な第三者の意見も聴いて、抜本的な改革をしてほしい。